かわきた第249号(2014年夏号)掲載「川崎の自然をみつめて」
親の姿が見たい、キリギリスの仲間の幼虫たち

かわさき自然調査団 岩田臣生

 バッタ、コオロギ、キリギリスの仲間は蛹の段階を経ない不完全変態をする昆虫です。不完全変態の昆虫は幼虫の形と成虫の形が大きくは変わらないので、幼虫から成虫を想像することが容易いと思っていました。しかし、そう簡単には見抜けないものです。6〜8月はそんな幼虫たちに出会える季節です。もし草むらを見つけたら、その中をじっと眺めてみてください。小さな幼虫たちが見つかると思います。
 川崎の自然の楽しみ方としては、小さな幼虫を見つけて、その親を図鑑などで探すということもありだと思います。
 @ササキリの幼虫
 余りにも大胆な黒と橙色の配色で、成虫の姿を想像することは全くできません。昆虫図鑑でも幼虫まで図解しているものは見当たらず、初めて出会ってから正体が判明するまでに数年かかりました。
 川崎の草地では6〜8月に見られますが、普通、8月には成虫になります。この派手な色合いは若齢幼虫ほど鮮やかです。林縁のササやヨシなど、イネ科植物のある所に棲息しています。この季節、生田緑地では度々観察されることから個体数は少なくないと思われます。ただ、イネ科植物の茎の中に産卵しますから、晩秋〜冬の草刈りを徹底しているような場所では命をつなげないかも知れません。
 Aアシグロツユムシの幼虫
 黒色と鮮やかな黄緑色の幼虫です。活動中でも目に留まる鮮やかさです。初めて出会った頃は、こんな配色の昆虫がいることに驚き、自然界の不思議を感じました。
 アシグロツユムシは北海道、本州、四国、九州の平地から亜高山帯まで広範囲に生息するキリギリス科の昆虫です。草食性で花弁や若い果実を好んで食べますが、自分の脱皮殻も食べてしまうようです。幼虫は、ササキリ同様、6〜8月に見られます。成虫は、薄暗いが木漏れ日がさすような場所の草木の葉上でジッとしていることが多いようです。
 Bヤブキリの若齢幼虫
 ヤブキリはヤブに棲むキリギリスという意味で名付けられましたが、若齢幼虫は草地で花粉や花弁を食べています。それが、脱皮を重ねるうちに少しずつ肉食に適する体に変化します。つまり、大顎が発達してきます。川崎の丘陵地の樹林には普通に棲息していると思われます。
 以上はキリギリスの仲間ですが、バッタの仲間も若齢幼虫は想像しにくいものがいます。
 Cフキバッタの幼虫
 フキバッタの仲間は翅が退化していて飛べないため地域分化が進んでいると考えられています。種の同定は非常に難しいのですが、明らかにされている分布域から、川崎で見られるフキバッタはヤマトフキバッタだと推測されます。日本固有種で、落葉広葉樹林の明るい林床や林縁などで、クズやフジバカマなどの広くて柔らかい葉を食べて棲息しています。イナゴによく似ているので間違えやすいバッタです。


@ササキリ幼虫            Aアシグロツユムシ幼虫

Bヤブキリ若齢幼虫          Cフキバッタ幼虫

この文章は、かわきた第249号 2014年夏号に掲載されたものです。
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