林長閑さん死去「土壌生物は教材」 市の自然調査の礎築く 東京新聞 2013年7月16日朝刊川崎版


 川崎市の自然調査の礎を築いたNPO「かわさき自然調査団」理事で、農学博士の林長閑(のどか)さん=横浜市港北区=が亡くなった。「どんな小さな土壌生物も、環境の変化を教えてくれる」。市民や市職員にそう説き、調査のノウハウや自然に接する楽しさを伝えてきた。
 林さんは兵庫県出身で、北海道大で農学博士を取得。カブトムシやホタルなど甲虫類の幼虫研究の権威で著作も多い。法政二高(中原区)で生物を教え、東洋大でも教壇に立った。数年前から体調を崩し、五月二十九日に肺炎で死去。八十四歳だった。
 多摩区の市青少年科学館が一九八二年に自然系の博物館として登録された際、市の地質や動植物の分布を把握する初の「市自然環境調査」が計画され、法政二高教諭だった林さんは専門家として招かれた。当時、科学館に生物の標本や資料はなく、自然調査の知識を持った職員はゼロ。林さんは対象の観察、採取、分類の手法から、報告書の作成までの「いろは」を参加した市民ボランティアと職員に伝授した。
 NPOは、一〜四次調査に参加した市民を中心に九八年に結成した。現在事務局長を務める岩田芳美さん=宮前区=は、第三次調査(九一〜九五年)にボランティアで参加し、林さんにピンセットや光学顕微鏡の使い方から手ほどきを受けた。
 現場を離れた後も人脈を生かして、一線の研究者に市の調査に加わるよう声を掛けていたという林さん。台帳の保存の徹底など博物館行政への提言も惜しまず、「調査結果は後世に残すべき貴重な成果だ、と常におっしゃっていた」。岩田さんは在りし日の師をしのびつつ、その死を悼んだ。(栗原淳)


生田緑地で樹木の虫を調べる在りし日の林長閑さん(かわさき自然調査団提供)


《事務局へのメール》
特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation