川崎の生きもの(低地部、市街地など)


イ)低地部の市街地に残る小水流

二ケ領用水は 400 年前に多摩川下流域の新田開発のために掘られたものです。
そして現在も、農業用水、市街地を潤す環境用水として多摩区から幸区まで 20km を流れています。
かつて川崎にも水田が広がっていた頃は重要な水流だった小さな水路は市街化の過程で護岸整備がなされてきましたが、 都市としては洪水の危険をもたらす場所として扱われるようになった場所もあります。
しかし、そんな水底にアイノコイトモ(ヒルムシロ科)などの水草が生き残っていたりします。


アイノコイトモ
二カ領用水中には少ない種類の沈水植物。
茎は長くしなやかで葉の幅は3oほど細長い。
用水の流れがやや速く、水質のきれいな場所に生えます。
細かく枝分かれした根を水底の砂土に固定して群生しています。水草の中で流水に最も適した形といえます。
秋に葉の脇から花の柄が出ますが、種子は出来ないといわれています。種子ができないのに用水の数か所に生えています。流れ藻が住み着いたのかもしれません。
この植物は多摩川で最初に発見され、まだ検討の余地が残っているようです。


セキショウモ(トチカガミ科)
二ケ領用水の水中の沈水植物です。
リボン状の葉が流水に漂い、秋に花をつけます。

二ケ領用水は現代では環境用水として市内の27q余りを流下、水量や流速などが安定して水中植物の生育地となっています。
セキショウモは植物全体が水中にある沈水植物で、用水の所々でみられます。
多年草で根を水底の泥土に固定し、柔らかいリボン状の葉を伸ばし常に流水中に漂っています。
秋に40pにもなる長い花柄が伸び2oの花を着け、やがてコイル状になって水中にゆれています。
初冬に葉は根元から千切れて流れますが、一部は緑のまま冬を越します。
生育地は用水利用状態に影響されます。


ササバモ
多摩区上河原堰取水口と中原区の二ケ領用水幹線水路の水中に生育しています。
茎の長さは1m以上となり、柄のついた細長い葉が流水にひたっています。
葉柄や葉の主脈は水中で白く鮮やかにみえます。
夏季に3pほどの花の穂をつけます。
秋になると葉は根元から枯れて脱落し、茎だけが初冬まで残っています。
水底の泥土の中で発達した地下茎があり、繁殖用の芽を付けて冬を越します。
春になり用水路に通水が始まると芽を伸ばして成長します。
セキショウモやオオカナダモと共生して群落をつくります。


ミクリ
花期6〜7月。
池や川など浅い水流に生育します。
線形の葉は1mを超えます。写真の白く球形状のものは雌花の集まりです。その上の緑色の小さ目の球形は雄花の塊です。
二ケ領用水や他の湿地で見ることができます。
果実が球形に集まり、クリのいがのようにみえるので、「実栗」の名がつきました。

※国)準絶滅危惧種、県)絶滅危惧II類

オオタニシ
オオタニシは成長すると殻高が60mmを超える日本最大級の淡水性の巻貝です。
一昔前には河川、用水路、池などの水量が安定した場所に普通に棲んでいたようですが、残念ながら、今の川崎で確認されたのは二ケ領用水の 1 ヶ所だけです。
三面張りの用水路の中に辛うじて生き残っています。

マシジミ
河川中下流、用水路などに棲む二枚貝です。
多摩川下流の喫水域に棲むヤマトシジミと違い純淡水性の貝です。
二ケ領用水や市内の他の用水路などの放流されたコイ等の魚類が定着していない所に健在です。
地元の方の話では 50〜60 年前は普通に食べていたそうです。



ロ)低地部の池沼等で見られる野鳥

キセキレイ(大きさ20p)
胸から腹が黄色のセキレイの仲間です。川や池、水田などの水辺の近くで見られます。
留鳥ですが、秋から冬にかけてよく見られるようになります。ユスリカやミミズなども食べます。


カルガモ(大きさ60p)
多摩川や中小河川、池などの水辺で普通に見られます。
カモ類の中で一年中観察できるのはカルガモだけです。
5月から7月には母鳥について小さい体で泳ぎ、藻などを食べるヒナに出会えることもあります。


カワセミ(大きさ17p)
頭から背中にかけてコバルトブルーの人気の留鳥です。
多摩川、中小河川、池などの水辺で見られます。
「チィー」と鳴きながら水面すれすれに一直線に飛びます。
水辺の枝などからダイビングして小魚やアメリカザリガニを捕え枝に打ち付け弱らせて飲み込みます。


ハ)低地部の池沼等水辺の昆虫
アキアカネ
代表的なアカトンボです。初夏に羽化して、近くの山に行き夏を越します。
9月頃に平地に戻るので河原や草地で多く見かけます。池などで産卵し、卵で越冬します。
似た種類のナツアカネは夏も平地の林などの日陰で過ごします。
アキアカネは主に腹部のみ赤くなりますが、ナツアカネは胸から頭まで赤くなります。


ニ)低地部の池沼等水辺の植物

ヒシ
麻生区早野地区には農業用ため池が7つあり、水田灌漑用に利用されています。
最も大きい林が池に浮葉植物のヒシが浮かんでいます。
春に水底の種子が発芽して茎をのばし、ひし形の葉を水面に浮かべるようになります。
最盛期には池水面の約半分がヒシで被われることもあります。
林が池は水が緑色に濁り富養性でヒシの成長に適しているようです。
秋に葉は紅葉してやがて枯れ、水面に残りません。
水門が開かれると水路にヒシが流れ出すので、用水内のヒシは採集し捨てられています。


ホ)低地部等に広がった外来種

ウシガエル
昨今、都市の公園・郊外の里地など至る所で、特有の太い声で鳴く本種、その幼生の巨大なオタマジャクシを見ることができます。
強い捕食圧は、日本の水辺の生き物に多大な影響を与えています。
本来、ウシガエルは大正時代に米国から食用として輸入され(アメリカザリガニもこの蛙の餌として輸入された)、その後逃げ出して野生化したものです。
特定外来生物に指定され、飼養・移動は禁止されています。

※環境省特定外来生物

オオフサモ
南米原産の抽水性多年草。
日本にはびこっているのは雌株で、水草本体が挿し木状に土にとりついて増え(栄養繁殖)、やがて浅い水面全体を覆うことになります。
河川・池・休耕田などに生育し、僅かな破片からでも再生しますので、一度入ったものを根絶することは困難です。
特定外来生物に指定され、栽培・移動は禁止されていますが、充分知られているとはいえない現状です。

※環境省特定外来生物

ミシシッピアカミミガメ
古くは縁日や熱帯魚屋の店先で普通に見たミドリガメ、これが、飼い切れなくなって池や川に放たれ、成長した姿です(耳の付近の赤い縞は、目立たないこともある)。
昨今は、日本古来のクサガメやイシガメを見ることも難しくなっています。
水生小動物だけでなく水草も食害しますので、生態系にとっては大きな脅威です。

※国)特定外来生物

ユウゲショウ
花期5〜9月。
明治時代から栽培されていたものが野生化した。
夕方に花を開くことにより名がついた。
路傍、空き地に生え、赤い花をつけるので、アカバナユウゲショウの別名もある。
※外来種(南アメリカ原産)


ミチタネツケバナ
花期3〜5月。草丈10〜20p。
在来のタネツケバナに似ていますが、タネツケバナは田んぼや湿り気のある草地などに生えますが、本種は主に乾燥した路傍に多く生えています。
葉はほとんど根生葉からなっています。
1992年に確認されたので新しい帰化植物ですが、繁殖力が強く、路傍、空き地に多く見られるようになりました。
※外来種(ヨーロッパ〜東アジア原産)。


タマシダ
伊豆半島以西の暖かい地方のシダで、海岸の崖地や畑の縁などに群生します。
川崎市内では園芸用に植えられたものが逸出したようで、南部3区と多摩区で確認されています。
日当たりのいい所では、株元からランナーと呼ばれる茎を時には50cmにも伸ばして新しい株を作り、地面や石垣を覆うほどに成長します。
ランナーの途中に茶色の鱗片で被われた 1〜2 cmの堅い玉を付けることがあり、これが和名の由来です。
玉は本来、水分を蓄える器官ですが、芽を出して株になることもあります。
※逸出種


マダラヒメグモ
1982 年に発見された外来種です。
2014 年に初めて、自宅マンションの窓の外側にいるのを見つけました。今では室内にも生息しています。
市内では、多くの住宅等で見つかると思われます。1年を通してみられます。

マルゴミグモ
図鑑には、海岸地域に多く生息とありますが、私は 2003 年に文京区湯島の墓地で、初めて見つけました。
南方系のクモで徐々に北上してきたようです。
生垣、植込み等で多く見られ、網は斜めに張ることが多いです。
網の中心から1方向にゴミを付けていき、クモは、網の上に乗るように中央の上面に止まっています。
卵のうも、ゴミと同じような場所に産み付けられています。


ヘ)低地部でも普通に見られる、都市化に適応した生物

市街地の中にも、都市環境に適応した生物が見られます。

アオスジアゲハ
幼虫がクスノキなどの植栽樹木の葉を食べることから、緑の濃い丘陵地だけでなく市街地にも見られる身近な蝶。
他のアゲハ類に比べて、白い花を好む傾向が強いようです。
幼虫の写真は、剪定後に萌芽したタブノキについていたものです。柔らかい新葉を好みます。

昔、(故)脇 一郎氏と二人で、蝶類同定のために、(故)中山周平氏の自宅を訪問したことがありました。
中山氏は、著書『柿生 里山は今』にも書かれていますが、東京青山の師範学校に入学(1930年)して初めてアオスジアゲハを見たと話して下さいました。
初めて見た翅の美しさ、感動は忘れないと・・・。
…………
中山氏によると1920年代の川崎市北部の丘陵地にはアオスジアゲハはいなかったようです。
ご自宅付近には幼虫の食樹であるクスノキが無かったそうです。
1930年代に発刊された武州向丘村植物誌、武蔵登戸附近植物目録にもクスノキの記載はありません。
クスノキが道路や公園などに植栽されるようになるのは丘陵地の開発が始まってからのようです。
アオスジアゲハは植栽されたクスノキに飛来する市街地の蝶と言えるようです。

(左)アオスジアゲハ成虫、(右)アオスジアゲハ幼虫

歩道端に咲くスミレ科のスミレ
市街地の中の街路の歩道端に、自然発芽したスミレが咲いていたりします。


オオスカシバ
校庭の花壇にも飛んでくる昼間飛ぶ蛾、ハチドリのように飛びながら、花の蜜を吸います。
幼虫は園芸植物のクチナシを食べるので人間の生活圏に生息しており、市街地の公園から田園地帯の庭先まで、多様な環境で見られます。




アダムソンハエトリグモ
屋内性のクモで5月から10月頃まで室内の壁、天井などを歩き回り、ハエ、カなどの害虫を捕食します。市内での地域的な差は無いと思われます。

キシノウエトタテグモ(NT)、ワスレナグモ(NT)
旧い(古い)民家の庭先にキシノウエトタテグモとワスレナグモの巣穴がとなりあって見つかることがあります。
この 2 種の巣穴の間を獲物が通った時、巣穴に扉が無いワスレナグモの方が先に獲物を狩ると思われますが、 実際は扉が付いている巣穴に棲むキシノウエトタテグモが獲物を巣穴に引き込んでしまいます。
どちらの種も丘陵地内部では見られない、昔からの農家の庭や畑のへりなどで見られます。
キシノウエトタテグモ

コガネグモ


ゴマフリドクガ
ドクガ科の一種で幼虫、成虫共に有毒の毛が刺さると激しい痛みが出ます。
前翅の模様は写真のような全体に細かいゴマ降り模様の他にも全体が黒っぽくなるものと変異があります。
幼虫は体に沿って背に黄色、側面に赤い帯があるケムシです。
ヒサカキ、サクラ、バラなどで育ちます。
市内には何種かの毒のあるドクガ科がいます。またイラガ(イラガ科)も有毒です。 皆同じように成虫は黄色っぽく形も似ています。 それを覚えて注意してください。


セスジスズメ
飛行機のような翅を持つのはスズメガの仲間です。
素早く飛び夕方から花に吸蜜に来る種類が多いです。
セスジスズメは背に尾に達する白線が二本あるのが特徴です。
幼虫は赤味の丸紋列が頭から尾に沿って左右にあり、グロテスクですが分かりやすいです。
街中でもヤブカラシをよく食べています。農家ではサトイモ、サツマイモの葉を食べる害虫となっています。



低地部・市街地に残る樹林

スダジイ
川崎の椎の木はスダジイです。
孤立台地加瀬山にはスダジイ林の断片が古墳跡の社叢に残り、樹齢が百年を超す老木もみられます。
スダジイは市内各地の社寺や民家にも植栽され育っています。


(左)熊野神社(幸区加瀬山)、(右)杉山神社(高津区)

ミズキ
市内の台地や丘陵斜面に多い落葉樹で、4月半ばから白花が斜面に目立ちます。
晩秋まで光合成を続け、成長が速い樹です。
加瀬山では市内最南部の落葉樹林の主木です。


ヤブツバキ
ツバキは“川崎の木”に選定された常緑樹で、冬の花は野鳥を呼びます。
野生のヤブツバキは樹林内で目立たず 9 月に花芽が発達し 12 月に開花します。
園芸種やカンツバキ類も公園緑地に広く植栽されています。


アカガシ
川崎には自生の樫が5種類のあり、アカガシは鋸歯の無い葉が特徴です。
どんぐりは 2 年で熟し、林内にも少なく目立たない常緑樹です。


カキノキ
民家によく植えられ、また樹林内にも成木が実をつけます。
麻生区の古寺には甘柿の原木があり、麻生区でその禅寺丸が植栽保存をされています。
また新種栽培の果樹園もあります。


マメガキ
中国原産とされ、麻生区民家で栽培されています。
樹高は約5mで樹齢は80年以上です。
2,3pほどの果実が鈴なりにつき、甘くなります。


イチョウ
中国原産の落葉高木で古くは寺院に植えられました。
宮前区の古寺には樹齢400年、樹高40mの大木があります。
市内の公園や街路に植栽され川崎の風土に適し生長は良好です。


トウネズミモチ
国原産の常緑低木で7,8mにもなります。
生長が早く近年各地に植栽され、多数の実をつけます。
川崎では雑木林内や林縁にも実生が生えています。


クロマツ
自然では海岸の岩場などに生える針葉樹です。
強靭な生命力で生育環境を選ばず樹姿の美しさが好まれ、古くから植栽されました。全市に逸出がみられます。



低地部・市街地で見られる草本

ウラシマソウ
花期3〜4月。草丈40〜50p。
花序の付属体が長く伸び、それを浦島太郎が釣り糸を垂らした姿に見立ててついた名という。
林内、林縁にかたまって生えることが多いい。
同じ仲間にマムシグサがあります。


ヤブタバコ
花期9〜10月。草丈50〜80p。
下方につく葉が大きくタバコの葉に似ているという。
茎の先で成長を止め、そこから四方に枝を伸ばす独特の形をしています。
果実は粘液があり、衣服などにつき運ばれます。
強い臭気があります。


ヒメスミレ
花期3〜4月。
草丈5〜10p。
名前の通り全体が小さいスミレです。
花も濃紫色でスミレに似ています。
人家周辺、路傍、アスファルトの隙間などに生えています。



低地部・市街地の公園や街路に逸出した植物

イヌカタヒバ
30cm前後の常緑性シダ植物です。
葉の上部は羽状に分かれて小さな葉を密につけます。
秋になると茎の先に1〜2oの無性芽ができ、これが落ちて成長します。
川崎市では逸出種として人家周辺に生育し、全区で確認しています。


マツバラン
暖地の樹幹、地上、岩の割れ目などに生える30pほどの常緑性のシダ植物です。
茎が何度も二又に分かれ、松の葉のように見えるのでこの名があります。
葉は非常に小さい棘状です。
茎につく球形のものは胞子のうが3つ合着したものです。
古くから園芸植物として栽培され、江戸時代には多くの品種が記録されています。
川崎市では3区で確認しています。


低地部・市街地で見られる外来種

ワカケホンセイインコ(大きさ40cm)
外来種の留鳥です。放鳥などで増えました。集団でねぐらをつくり、エサを探しに遠くまで飛んでいきます。
開けた明るい環境を好み、大規模緑地にはあまり入ってきません。
木の実や果実が好きで、桜の花も食べられてしまいます。写真はヤマボウシの実を食べているところです。
左の縦写真で首に輪があるのがオスで「ワカケ」の名前の由来です。右の横写真がメスまたは若鳥です。


低地部の公園・街路などに見られるシダ植物

イヌワラビ
葉の長さ20〜60cmになる夏緑性のシダです。根茎が長くはい群生します。
葉の大きさや形は変化が大きいです。
人家の周りなどいたるところに生え、川崎市では全区でふつうに見られます。


スギナ
「つくし誰の子スギナの子」といわれ、誰もが食べたり遊んだりするシダ植物です。
早春に出てくる淡褐色の胞子茎を「つくし」と呼び、食べられます。
緑色で小枝を輪生する栄養茎がスギナです。
日当たりのよいところに群生し、川崎市では全区でふつうに見られます。

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