生田緑地の谷戸の自然保全活動



旧岡本谷戸と科学館裏谷戸の水辺保全

日時 2015/12/1(火) 10:00〜12:30 晴
場所 生田緑地 旧岡本谷戸、科学館裏谷戸
参加者 岩田臣生、鈴木潤三

旧岡本谷戸
旧岡本谷戸といっても、知らない人の方が多いと思います。
岡本太郎美術館が現在の位置に決まる前に建設を予定していた谷戸です。
この谷戸の水辺にも、神奈川県準絶滅危惧種であり、氷河期の生き残りといわれる甲虫が棲息しています。
これは寒冷地の生物なのですが、何故か多摩丘陵の谷戸に点々と棲息しています。 その棲息条件としては、湧水とスゲ植物の存在が欠かせません。
ここの水流は飯室層の崖面を滴る湧水が谷底部の縁を流れるもので、生田緑地らしい水源状態を観察できる場所です。
10年程前に造園業者が伐採材を水流に廃棄するという事件がありましたが、こうした水辺こそが、生田緑地の大切な資源であるということを訴えるとともに、 景観としても魅力を感じてもらえる状態にしたいと考えて保全活動を継続しています。
今年は雨の日が多かったためか、スゲ植物の繁茂が著しく、魅力的な景観ができつつあると感じました。
流れてくる土砂の量も多かったようで、水流部分にはすっかり泥が溜って、水面は見えませんでした。
水流の保全活動の基本は、水流に溜った泥を掬って堰をつくり、一連の水溜まりをつくることだと考えています。
生物が生息している水流部分の活動は、ここまでが現時点での「取り返しのつく範囲」と考えて実施しています。
水溜まりができると、野鳥が頻繁に観察されるようになると感じています。



科学館裏谷戸
一休みしてから、科学館裏谷戸の水流の泥あげも行いました。
旧岡本谷戸と同じように全体が飯室層という感じの谷底で、そこに斜面から流れ落ちてきた土砂が薄く覆っています。
ですから、水流は簡単に土砂で埋まってしまいます。
谷戸の奥の水溜まりに野鳥が集まることを期待して観察小舎があります。 水溜まりが消えているのは、水生生物にも拙い状態です。 今年のような雨の多い年は年1回では間に合わないことが分かりました。
旧岡本谷戸と比べると植物の勢いが劣っていて、俗な言い方をすると、少し荒れて感じられました。
こちらも、前述の絶滅危惧種が棲息する谷戸です。
こうした生物が、今後も生き続けられるように、できるだけの保全は継続したいと思います。

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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
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