里山倶楽部 B
【2017/1/21 更新】
萌芽更新を目指したクヌギの伐採

日時 平成29年(2017) 1月21日(土) 10:00〜14:00
場所 生田緑地萌芽更新地区
参加者 工藤思由(高1)、渡部朋子
   (環境ジャーナリスト)佐久間淳子
   (富士通) 渡邊洋己、東 陽一、岩渕裕輝、久保田雅洋、鈴木幸記、長谷川充彦、若藤卓也
   (東京工業大学 吉村・藤井研究室)大谷絵利佳
   (生田緑地整備事務所) 清田陽助
   (生田緑地運営共同事業体)額谷悠夏
   (かわさき自然調査団市民部会事務局)岩田臣生、岩田芳美、政野祐一         16名

今回の里山倶楽部Bは、萌芽更新地区のクヌギの伐採を行うことにしました。 勿論、萌芽更新を目指した伐採です。
普通の市民を集めて行う植生管理活動で、直径20cmを超える樹木の伐倒を行うことは、かなり冒険だと思いますので、実施を決める時も、参加者を募集する時も、迷いはありました。
しかし、下記のように、少しずつ、経験を積んできて、欲張らなければ、大丈夫だろうと判断しました。
里山倶楽部は、単に活動をレクリエーションとして楽しむだけではなくて、活動の結果が、 生田緑地の雑木林の自然を保全することにつながるということが、参加者にとっては大きな意味を持っていると思います。
それも、普段はできないような活動であれば、尚更、達成感も、楽しさも大きいと思います。

対象にした萌芽更新地区は、伝統的な里山管理としての萌芽更新を繰り返す場所とするべく、1998年末に、コナラ林 1200u を伐採した地区です。
皆伐ではなく、サクラなど、残された樹木も多数あったようですし、同時に、クヌギなどが補植されました。
伐採後の植生変化については、かわさき自然調査団の藤間X子を中心に、植物班が協力して、植生調査を継続していました。
しかし、萌芽枝は育たず、萌芽更新地区というイメージの雑木林にはなりませんでした。
伐採から 9年が経過した2008年1月19日の市民部会では、当該地区をモニタリングして、その後の目標植生について話し合いました。 (市民部会2008/1の記録

そして、改めて、伝統的な植生管理としての萌芽更新を繰り返す雑木林を目標植生とすることを合議し、そのための植生管理を、次のように進めてきました。

  2009年 1月18日 市民部会...コナラ以外の小径木、ミズキ、ムクノキ、イヌシデ、キリなどの樹木伐採
  2009年 2月 8日 市民部会...樹木伐採
  2009年 6月 9日 市民部会...モニタリング
  2009年11月 1日 市民部会...アズマネザサ刈り
  2009年11月 5日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2009月11月15日 市民部会...ムクノキ、ヤマグワ、センダンなどの樹木伐採
  2010年12月23日 市民部会...アズマネザサ刈り
  2011年 1月22日 市民部会...ムクノキ、アカシデ伐採
  2011年 7月16日 市民部会B...モニタリング
  2011年12月 7日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2011年12月11日 市民部会A...モニタリング、アズマネザサ刈り
  2011年12月12日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2012年 2月10日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2012年 2月15日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2013年 2月16日 市民部会B...アズマネザサ刈り
  2013年12月21日 市民部会B...アズマネザサ刈り

この過程で、高木層を形成していた大径木を伐採することにより、林床が明るくなって、弱々しかった補植クヌギが成長し始め、ゴンズイなどの実生が多数みられるようになりました。
そこで、萌芽更新を試してみることにして、斜面下方のコナラ 2本とクヌギ 1本を伐採しました。

  2014年1月18日 市民部会B...萌芽更新を目指したコナラ(2)、クヌギ(1)の伐採、アズマネザサ刈り
  2014年 3月 4日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2014年 3月 6日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2014年10月28日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2014年12月20日 市民部会B...アズマネザサ刈り
  2015年 1月17日 市民部会B...アズマネザサ刈り
  2015年 5月 2日 市民部会A...クヌギ稚樹植樹
  2015年10月24日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2015年12月 5日 市民部会A...実生木保護とアズマネザサ刈り
  2016年 2月 4日 水田ビオトープ班...アズマネザサ刈り
  2016年10月 1日 市民部会A...アズマネザサ刈り
  2016年10月15日 市民部会B...アズマネザサ刈り

このクヌギ2本の萌芽枝は様々な昆虫の攻撃に遭い、成長することはありませんでしたが、クヌギの萌芽枝は生き残っています。
区域の低木層であるムラサキシキブ、ヤブムラサキなどは 3m程にもなり、補植クヌギは一際高く成長し、胸高直径は 20〜30cm になっています。
2008年1月に再確認された目標植生に向けて、萌芽更新地区では区域内の樹木の伐採を行う時期になったと考えました。
そこで、先ずは里山倶楽部Bにおいて、大径木となってしまったクヌギの伐採にとりかかることにしました。

参加者16名は生田緑地整備事務所裏の倉庫前に集合し、ヘルメットを着用し、ノコギリ、枝切り鋏、ロープなどを持って、萌芽更新地区に移動しました。

萌芽更新地区下のデッキで、萌芽更新地区についての説明、活動方法を説明してから活動を始めました。
と言っても、全員が一斉に伐倒にかかることはできません。
1本目に伐倒するクヌギを決めて、ノコギリの使い方、伐倒方法から話を始めなければなりませんので、1本目の伐倒には時間がかかりました。
初参加の人、更にはノコギリを使うのも初めてという参加者がある里山倶楽部では、安全を考えれば、仕方ないことと思います。
また、大きなノコギリは 2本です。 この活動から見れば対象区域は狭く、区域の下方には園路がありますから、基本的には、1本ずつ伐倒、片付けを繰り返す方法が良いと思います。



伐倒では、倒す方向を微妙に調整するために、ロープを使いました。


1本目のクヌギを伐倒しました。
確実に園路を叩いていますので、通行する来園者のケアにも手が抜けません。


伐倒した樹木細かく分けて、カントリーヘッジとして片付ける活動は、全員で行いました。
活動前から林内の、置くべきでない場所に、放置されていた材の移動も、仕方なく、できる所は片付けました。


1本目の伐採材の片付けを進めながら、2本目の伐採も始めました。
受口を伐るだけでも時間がかかるためと、2本目のクヌギは斜面の上側に伐倒することが適当であると判断していたからで、安全は確保しています。
念のために、2本目の伐倒でも、ロープを使用しました。


いつもの市民部会なら、休憩を取る時間でしたが、一段と太いクヌギの伐採まで行っておきたいと考え、3本目の伐採に着手することにしました。
このクヌギの重心は斜面下側に向いていたので下方に伐倒することにしました。
ただ、下方には、今回は残したいと考えているアカシデほかの樹木が枝を広げており、少し細いながらも数本のコナラなどがあり、 更には、斜面下端部には、傷つけたくないサワフタギもあるため、倒す方向を微妙に制御する必要がありました。
そこで、受口を伐る作業は進めながら、伐倒の障害となる数本のコナラなどの伐採を先に済ませました。


伐倒の邪魔になる樹木の伐採を終えて、本格的に、3本目の伐採を進めたのですが、受口がなかなか伐れずに時間がかかってしまいました。
伐倒に手間取っている間、手の空いている人たちには、休憩してもらいました。


終了時間は大幅に遅れてしまいましたが、誰からも苦情は無く、むしろ、大きな課題を成し遂げたという満足感に溢れた笑顔でした。 お疲れ様でした。
片付けきらなかった材が残っていたり、切り株の伐り直しができなかったりしますが、これは、後日、済ませておきたいと思います。
また、2月の市民部会でも継続して、萌芽更新を目指した樹木の伐採を行いたいと考えています。


(気がついた問題)
林内に、大きな伐採材が転がされていました。
活動の邪魔にもなり困りましたが、これは大きくて、簡単に移動することはできませんでした。
枯木だからという理由で伐採した材だと思いますが、玉切りにして、カントリーヘッジ等に片付けてほしいと思います。
来園者の安全のための枯木の伐採は仕方ありませんが、伐採材を置く場所と置き方には適切な配慮をお願いしたいと思います。
今回のことだけではなく、倒木等の処理材の片付けでは、自然と景観に配慮してほしいと思います。

かわさき自然調査団の活動

特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation